2013年7月20日土曜日

うどんスープで有名な会社と同じ名前。2-1.

2-1.うどんスープで有名な会社と同じ名前。

もしも、そのアイスが彼女の体の中の栄養を少しだけでも補給して、体温が一度でも下がり、家に帰る時間が五分でも遅れて、布団に入る時間が三十分ずれたなら、もしかしたら、こんなことにはならなかったのかも知れない。

このようなことが、何度も頭の中でグルグルと回り。部分的に増幅したり減衰したり、フラッシュバックしたり……総量は増えているようで変わりなく、ただ、拡散と凝縮を繰り返しているのかも知れない。

彼の名前は綿貫東丸[わたぬきひがしまる]。うどんスープで有名な会社と同じ名前のせいで『うどん』とあだ名で呼ばれたりするが、本人もうどんが好きなので、あまり気にしていない。『スープ』と呼ばれたことは今のところない。

「あ、今、パワーアップ。取らないの?」

「スピードは3がやりやすいし。」

ベランダからスルっと女の子が入ってくる。彼女の名前は春野雪乃[はるのゆきの]。わりと自己矛盾な名前な感じがするが、姓名というのはそういうものじゃあない。細田太さんだっているだろう。念のためググったけど、フェイスブックとかは出てこなかった。

雪乃は東丸の隣家に住んでいて、案の定というか幼馴染という間柄。家族ぐるみの付き合いってほどじゃあないけど、そこそこ仲が良い。しかし、ベランダをつたって部屋に入ってくるとは、ちょっとイキすぎな気がする。そのせいか、東丸もぎょっとしている。

「……えーと、君、死んだよね。」

「そのはずです。」

雪乃はベランダから入ってきたけど、ガラス戸は一度も開いていない。

参考文献


藤崎竜作品集 1 サイコプラス (集英社文庫―コミック版) (集英社文庫 ふ 26-1)

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