2013年7月20日土曜日

心の声の言葉遣いに男女差はあれど。16-1.

16-1.心の声の言葉遣いに男女差はあれど。

「あのさ。他に何か、やりたいことって残ってない?」

「やりたいこと?」

「マンガとかでよくあるけどさ。やっぱり幽霊は未練というか、生きていた頃にできなかったことをやりたいと思うんだよね。」

東丸は『成仏』という言葉を使うのを避けていた。

「幽霊っていうか、私ね。」

「うん、ま。そうなんだけど。」

二人は沈黙してしまった。ここで、ハッキリとした答えを出さないといけないのかも知れない。

雪乃は考えていた。ずっとこのままの気楽な関係が続いていけばいいと思う反面、常識的な考えが同時に存在する。「このままでいいのか」と。だけど、そのことを伝えて、それが解決策じゃあなかった場合、どうなってしまうのだろうか。東丸もまた考えていた。一番好きだった人が死んでしまって、悲しいのは何故だろう。もちろん人が死んで悲しいというのは当然かも知れないが、もしかしたら悲しいのは自分かもしれない。

伝えることができなかった言葉。もう会えない。悲しさとは、残された自分の方にあるのだとしたら。あるのだとしたら。もしも、伝えることができるなら。意志の疎通をはかれるなら。そう、雪乃が幽霊として現れたその時に、自分の思いを伝えるべきだったのである。

心の声の言葉遣いに男女差はあれど、二人はほぼ同じことを考えていた。「でも、もしも成仏できなかった場合はどうなるのだろうか?」。そして、二人が考えることで大きく違ったのは「好きとは言わない。」と「たしか好きな人がいたはず。」ということだった。二人がそれぞれに考えて、導き出した言葉は……。

「だ、男女交際とかに興味があるかな……。」

という告白。

「じゃ、じゃあ……デートとかしてみる?」

という返事。それはとてもギクシャクしたモノだった。

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