2013年7月20日土曜日

この世から失われたモノが再び現れる。10-1.

10-1.この世から失われたモノが再び現れる。

「壊れるって言っているだろ。」

「ちぇー……。」

「さて。夏休みに入ったことだから、そろそろ本腰を入れて考えていかないといけないな。」

東丸は、かねてから考えていたことを雪乃に言うことにした。真剣な話題に入るのを意識したのか、わざとらしくスクリと立ち上がった。

「そうですね。志望校とか、進路とか、考えないといけないね。」

「……。」

「あ、違った?進研ゼミやる?今やる?」

彼女はわざと話題をそらしているのだろうか?志望校なども勿論大事だけど、そういうことではなく。ただ、そらされてしまうと、次に話そうとした話の核心は、つまりは『別れ』を意味する訳で、口から出すことが憚られる。だから、東丸は、なるべく明るく切り出そうと、笑顔を作ろうとする。

「どうしたの?顔がつった?」

しかし、それも筋肉の強張りに勘違いされて、なかなか、上手く行かない。彼が話そうとしていたのは……。

「そろそろ、ジョーブツのことも考えてみますか?」

「え。」

まさに自分から話そうとしていたことを相手から話されると面食らう。それは偶然かも知れないし、彼女は分かっていたのかも知れない。


「いつまでも、こうやってダラダラしている訳にもいかないしさ。ユーレイって言ったら、やっぱり成仏じゃない?」

「ん、んー。まぁ、そうだね。」

「もしも、生き返れるなら、生き返りたいけど、もう幽霊になっちゃったしねぇ。」

二人は具体的に触れなかったけど、お葬式はもう既にすんでいた。幽霊は、もう目の前にいる。だけど、この世から失われたモノが再び現れるということは、想像が難しい。

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